2015年12月26日

追憶のハセツネランニング2015。

 2015年10月31日、第23回日本山岳耐久レース長谷川亘男CUP(ハセツネ)開催。
 例年よりも、3週間遅い開催で、皆、寒さを心配していた。
 僕にとっては、3回目のハセツネ。
 2012年、2013年で今回の2015年。
 ここのところ、日々、慌ただしく、まるで練習していないが、
 ハセツネの情景が忘れられず、また走ることした。

 ハセツネ前日までも、慌ただしかったが、
 サプリメントの準備、パッキングなどの準備を終えて、
 無事、大会当日を迎えた時は、意外と嬉しかった。
 これから、ハセツネのことに集中。他のことは知らない。
 イエイ。

 当日、曇り空。気温10度。ハロウィン。
 武蔵五日市のスタート地点に行く。
 スタート前は、アレキさん、R2さん、メテオデさん、sadaさん、
 すーさんのダンナさんなどと、素敵なランナーの皆さんと打合せ。
 それぞれが思い描くハセツネがあるのだろう。
 71.5kは、遥かだ。
 何が起こるかわからない不安はある。
 けど、ドキドキとした高揚感に包まれる。
 ローラさんとホシヲさんが応援に来てくれた。
 名古屋のお菓子「ゆかり」や、ゴールしたら飲んで!と、
 名古屋工場の「一番搾り」、今回は寒いからと「貼るオンパックス」
 などをくれた。
 静かに湧き上がる闘志。
 まわりは、屈強なハセツネランナー。
 いつになっても、緊張する時間帯だ。

 13時いよいよスタート。
 「プゥーーー」と、間が抜けた笛の音が鳴り響き、
 2500名の選手が、グワワと動き出す。
 今年の目標は、11時間台だ。
 ちなみに、2012年初出場の時は、14時間42分。
 2013年2回目は、12時間53分。
 今年は、まるで練習不足ではあったが、コースも覚えたし、
 力の入れどころもわかってきたし、栄養もとったしと、楽しいし、
 で、そんな高めの目標を設定した。
 参加者は、10代から70代まで、すべての年代で
 エントリーがある。
 一番のボリュームゾーンは、40代。
 我々の世代は、ハセツネが好きなのだ。

 スタート時は、華やか。
 沿道の方の応援が華やか。
 こちらも、元気なので、華やか。
 なんか嬉しい。
 いつもの「いなげやダッシュ」を決めつつ、山の方へ進む。
 晩秋の奥多摩地域。
 これから、71.5k。
 五日市中学スタート→変電所→今熊神社→市道山分岐
 →醍醐丸→生藤山→浅間峠(22.66k地点第1CP)→笹尾根→槇寄山
 →三頭山→鞘口峠→月夜見駐車場(42.09k地点第2CP)→御前山→大ダワ
 →大岳山→御岳山(58.0k地点第3CP)→日の出山→金毘羅尾根→
 五日市会館フィニッシュ(71.5k)
 いつもながらの、茫洋たる不安。
 いいよ。
 流されるままに、ほぼ皆と同じスピードで走っていったが、
 変電所に着く前に渋滞。
 いきなり、だらだらと歩く。
 シングルトラックなので仕方ない。
 手持無沙汰で、写真を撮ったりする。
 ハセツネは、午後スタートで、浅間峠に着く頃には、
 夜が来て、暗闇の中を走ることになる。
 景色が見れるのも、今のうちだけか。
 やがて渋滞は、解消して徐々に流れていく。
 走らねばならない。 

 今熊神社から、今熊山へ。
 急な坂道なので、走れないが、皆、ワシワシを上っていく。
 ペースは速い感じだ。
 山の中は、空気が澄んでいて、遠景が見渡せて
 ホント、気持ちいいですねとは、だれも言わず、
 黙々といく。
 今熊山から、先は、山のトレイルとなって、
 だんだんとランナーが、バラけてくる。
 入山峠のあたりで、また、渋滞があった。
 しかし、それも、すぐ解消して、孤独なランが続くことになる。
 市道山分岐。
 どういうわけか、いつもこのあたりで、足が攣るのだけども
 今年は、まるでその気配がない。
 どういうことだ?あらかじめ、水分を多くとり、
 折に触れ、塩サプリメントを摂取したお蔭かもしれない。
 ヒヒヒ。
 そうなると、嬉しくなるものだ。
 走りにも、リズムが生まれてくる。
 ザッツ、ザッツ、ザッツ。
 醍醐丸山頂には、レイさんが応援に来てくれていた。
 顔見るだけで、嬉しい。
 ハイタッチをさせてもらったが、私のグローブが
 汗で湿っていて、ちょっと気になった。大丈夫だったかな。
 スタートから、3時間36分で、第1CP浅間峠に着く。

 いいペースじゃないか。
 前回よりも、7分も早い。
 いいリズムだ。
 浅間峠には、ランナーの他に、大会関係者、応援の方が多くて
 楽しい雰囲気だ。
 けども、夜が近づいてくるので、不安な気持ちが募る。
 そんな気持ちをかき消すように、おにぎり、唐揚げ、ジェルなどを
 次々に忙しく摂取。
 今回の作戦としては、レース中、空腹期間を作らないようにしていた。
 お腹が空いた時は、もうバテている時だと勝手に考えて、
 こまめに、補給するようにした。
 「腹が減っては、戦が出来ない」
 An army marches on its stomach.
 ちなみに、今回も、ハルに頼んで、
 おにぎりと唐揚げとゆで卵を作ってもらった。
 ザックに詰めるだけ、詰めた。
 他に、水2ℓ、パワーバーとかエナジージェルとか
 塩サプリとか、アミノバリューとか、みかんとか、チョコとか。
 深淵に考えず、とりあえず持っていく。 

 浅間峠に着いたのは、17時前だけど、
 あたりは、すでに暗く、寒かった。
 ヘッドライトを付けて、ウェアを着こみ、
 手にハンドライトをもった。
 で、再び、スタート。
 夜が来る。とりあえず、お腹は満たされた。
 イエイ。
 と、思ったのも、束の間。刹那。
 足が攣った。
 右太もも、左太もも、硬直。
 痛い。走れない。
 一体、どういう訳だい?ゴッド?
 暗澹たる気持ちが鬱積。
 もう、や。
 と、のたうちまわっているうちに、多少、痛みがひいた。
 ゴッド、行っていい?
 笹尾根を、恐る恐る進む。なんとか、大丈夫のよう。
 暗澹に光明。
 まだ、まだ、先は長い。 
 
 霧に包まれる。
 ヘッドライトとハンドライトに照らされた
 半径3mくらいしか、視界はない。
 白の世界だ。その周りは黒の世界だ。
 まわりに、ランナーはいなくて、静かな世界だ。
 一体、どこを走っているかわからない。
 ただ、転ばないように足元に注意しながら進む。
 アップダウンが続き、やがてキツイ登り坂となる。
 大沢山、そして三頭山と続く道だ。
 ここのあたりから、ぼつぼつと行列になる。
 人によってスピードは違うけど、だいたい同じ集団で
 上っていくことになる。
 足の痙攣もおさまり、前向きになった僕は、
 集団に遅れないように、必死になってついていった。
 「六根清浄、六根清浄、英明果敢、英明果敢・・・・」
 いつものマントラを唱える。
 リズムをキープすることに集中する。
 ザック、ザック、ザック。
 進んでいないようだけど、成果はある。
 どんどん山頂との距離は縮んでいく。
 イエイ。
 立ち止まらず、一気に上った。
 なんとか集団についていった。
 その点は、今回のハセツネで褒められていいことだ。
 自分でも、意外な位、元気だった。

 19時32分。スタートから、6時間32分。
 三頭山山頂につく。
 ここから見える富士山は、美しい。
 チャレさんも、そう言っていた。
 が、今は、夜。漆黒。
 寒くもあり、悠長に構えていられない。
 ハルおにぎりと、みかんを食べて、「美味い」と思い、
 すぐに下ることにした。
 ここから鞘口峠まで、約2.5k。約400mを一気に下る。
 道は、ガレていて、急だ。
 危ないところだ。
 転ばないように、ゆっくりと進む。
 が、どういうわけか、暫く進んだところで、
 スピードが出てしまい、そのまま止まれなくなって、
 スポーンと体が投げ出され、一回転して、コースの外に落ちた。
 スポーンと。
 一体、何が起きたのから、よく分からないのだけど、
 気が付くと、コース脇の繁みの中で、木をつかんで、転がっていた。
 木の根っこみたいなところに、ザックが引っかかったお蔭で、
 落ちなかったようだ。
 「大丈夫ですか?」と、他のランナーが立ち止まってくれたが、
 手は出してくれなかった。
 きっと、そんな体力は残ってないのだろう。
 「大丈夫です」と気丈に答え、落ちないように慎重に、
 コースに戻った。
 ありがとうございます。ゴッド。
 戻ってこられました。
 しかも、痛いところはありません。
 慎重に進んでいるつもりだったけど、そうではなかった。
 暗闇を単調モノトーンに進むうちに、精神は機械化し、
 大事な何かを見落としたのかもしれない。
 今でも、どういう加減で一回転したのか、よく覚えていない。
 投げ出されて、宙に浮いている感じは、よく覚えている。

 兎に角、レースだ。
 憑りつかれたように、走り始める。
 鞘口峠について、月夜見へ。
 そんなに上りはキツくないけども、
 すでに、40kほど進んできた。
 体力は、徐々に消耗。
 気力は、まだ十分残っているので、気持ちは先をいくが、
 身体がついていかない。
 
 風張峠を越えると、コースは、一部、舗装道路を走る。
 街灯のある文明社会。
 まわりが、まるで見渡せない山の中とは、世界が違う。
 平らな舗装道路を走るのは、毎度のことだけど、
 とても嬉しくなる。
 文明・文化・経済・芸術・自然、全てが美しく偉大だ。
 と思うのも、ずっと暗く寂しい山の中を走ってきたから。
 しかも、この先には、月夜見駐車場。
 水がもらえる、ハセツネ唯一のエイドがある所。
 ハッピーだ。
 イエイ。

 月夜見駐車場。第2CP。
 20時44分到着。前回が、20時42分到着。
 なんと、2分も遅れているじゃないか。
 第1CPで、7分もアドバンテージがあって、
 三頭山も、立ち止まらず、上ったのに。
 さっき、投げ出された時に、気を失っていたのかな。
 なんか順調に来ていると思っていたのに、この結果に愕然。
 ま、仕方ない。
 ハルおにぎり、ハル唐揚げ、ハルゆで卵を食べ、
 笑顔の素敵なお姉さんに、水を入れてもらい、再びスタート。

 21時。みんな、今、何をしているのかな。
 僕は、走っている。寒さと疲れと戦いながら。ハハ。
 のっぺりとしたブラックホールのような暗闇を下り、そして御前山アタック。
 再び、「六根清浄」「英明果敢」。
 上っては、巻き道。また、上る。
 そんな繰り返しで、御前山に、22時。
 月夜見から、1時間か。
 自分の感覚では、40分で上るはずだったのにな。
 徐々に、遅れが広がっていく感。
 焦燥。
 そして、大ダワまで、下る。
 50k。
 後、21.5k。ゴールが見えてくる。
 しかし、大ダワには、リタイヤ収容所がある。
 ここで、リタイヤする人もいるって事だ。
 若干、緊張するけども、係の人達は、ストーブにあたりながら、
 何やら楽しそうに談笑していた。

 ハセツネ三山の最後、大岳山。
 ここを上れば、後は、ほぼ下りだけの天国。ヒヒヒ。
 そんな思考で、ワシワシと進む。
 岩場や、鎖場。
 楽には上らせてはくれない。
 体力もなくなっている。ハルおにぎりを、食べても、
 思うように力が出なくなっている。
 しかし、進む。前進。漸進。
 霧が少し晴れて、山の上に、月。
 妖しい月明かり。
 うっすらと山影が蒼く見える。
 幻想。
 ほとほと嫌になったころ、漸く大岳山山頂。(標高1266m)
 23時40分だった。
 広がるだろう大パノラマは、漆黒だ。
 前回は、空にカシオペア座が見えたが、今回は、妖しい月しかない。
 面白くもなんともない。
 そそくさと、下り始める。

 ここからゴールまで、下り基調なので、本来なら
 嬉しいのだけど、今回は、どうも嬉しくない。
 どうやら、身体が疲れて、元気もつきたようだ。
 ハルおにぎり、ハル唐揚げを潤沢に食べ、
 気力体力が溢れているはずなのに、どうも力が出ない。
 ハセツネは、想像以上に気力体力を使うようだ。
 仕方ないし、難しい。

 下りなのに、スピードが遅くなった。
 御岳神社近くの整備された走りやすい道でも、さらにスピードが遅くなった。
 御岳山の第3CP。
 23時41分到着。前回は、23時24分に到着。
 あらあら、ダメだわ、全然ダメだわ。遅いじゃないか、駄目じゃないか。
 昭和歌謡な御岳神社参道商店街も、御岳神社旅館街にも、
 まるで心が躍らず、ただ、ゆっくりと日の出山をめざす。
 ダメだ。ダメだ。ダメだ。

 日の出山直前は、約900段の階段が続く。
 這いつくばるように上りきると、日の出山山頂。
 61.5k地点。
 ここからは見渡す、東京の街明かりはとても綺麗だ。
 日付がいつのまにか変わって、0時51分。
 東京の街は、まだまだ明るい。
 というか、朝までずっと明るいのだろう。
 残り11k。
 最後のハルおにぎり、ハル唐揚げ、ハルみかん、ハルジェルを
 無理やり食べて、ゆく。
 前半、調子よかったのに、
 いつのまにか体力が落ち、後半、ダウン。
 ああ。
 金毘羅尾根。魂で走れば、楽なところだ。
 今までの行程に比べたら、コドモだ。
 いつもは、颯爽と走るに、
 今回は、先ほどから何度も言うが、駄目。
 まるで、スピードが上がらなくなった。
 トボトボと、林の中を走る。
 標高がだいぶ下がったので、もはや寒くはない。
 トボトボと走っていると、ボコボコとランナーが
 追い越していく。
 一体、どうしたら、あんなスピードで走れるのか。
 涙をこらえる。
 暗い林の中のトレイルを、単調に走る。
 音は、自分の足音以外にない。
 もう抜け出せない気持ちになる。
 それでも、走る、走る、走る。
 なんて、やっていたら、集中力が途切れていたのかもしれない。
 枯れた階段が続く道で、スポーンと体が宙に浮いて、
 ドシーンと落ちた。
 尻の下には、杭。
 衝撃と痛みで、暫く動けず。
 ランナーは、誰も通らず。
 身もだえてつつ、気を失っていたかもしれない。
 いや、それはないが、痛みが引くのをジッと待った。
 そしたら、ゴッド。メルシー。
 動けるようになるではないか。回復。
 人の体は、すごい。
 恐る恐る立ち上げり、また、トボトボと走り始めた。

 延々と続く、金毘羅尾根も終わりはある。
 森羅万象、物事には終わりがある。
 林を抜け、武蔵五日市の街明かりが見えた時が、
 けっこう嬉しい。
 冥界から、戻ってこられたという安堵感のようにも思う。
 とにかく、ゴールまで後1k。
 住宅街の中に、ゴールの五日市会館はある。
 傾斜のきついコンクリートの道を必死に走る。
 膝が相当疲れているようだ。
 道を示すスタッフの赤いライト。
 あの角を曲がって、次を右に行けば、五日市会館のはず。
 ホホホホ。
 ヒヒヒヒ。
 へへへへ。
 とにかく、ゴールだ。
 嬉しい。
 最後だけ、疾走。
 明るいFINISHゲートと沢山の人達に見守られてゴール。
 はー。
 終わり。
 ゴールできてよかった。
 走るのをやめて、パイプイスに座る。
 チップをとってもらって、記録証をもらう。
 そして、解放。
 感謝。夜空。感謝。

 フィニッシュタイム:2015年11月1日2時30分
 記録:13時間30分(前回12時間53分)
 順位:571位

 結局、記録は前回よりもよくなかったけども、
 今回は、転がりつつも、無事、帰ってこられたことが
 嬉しかった。
 タイムなど、どうだっていいのだよ。
 走れることが、とにかく嬉しいのだと実感した。

 ゴールの後は、地元の商工会議所の方が、ランナーに豚汁を
 ふるまってくれた。
 身体が冷えていたので、まことに美味しかった。
 そして、五日市中学の体育館で仮眠をとって、気が付くと
 横浜のサノさんがゴールして、荷物整理していた。
 もう帰ると言うので、一緒に外にでると、東の空が朝焼け。
 真っ赤で、泣きたくなるくらい美しい。
 そして、曙光。
 日がまた昇った。
 なんか、また、いいなって思って、来年も、もしかしたら走るなって思った。
 ホホホ。
 家に着いたら、誰もいなくて、汚れたザックやら、ウェアやらを
 全部、洗濯して、お風呂でじっくり温まって、ベットに入ったのだけど、
 この瞬間が、一番、気持ちよくて、心が広がった、幸せだったな。
 改めて、ハセツネ2015。
 よかったです。転がったけど。Like a rolling stone.
 ありがとう。
 また、来年。

 
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posted by hide at 15:51| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一歩間違えれば悲惨な目にあったのに、そんな楽しんでるっておかしいから(´д`|||)
怖くなったので来年も応援で(  ̄▽ ̄)
Posted by ホシヲ at 2015年12月26日 19:51
>ホシヲさん
来年は、出ましょうよ。
ホシヲさんなら、71.5kをもっと楽しく走ることでしょう。
当日は、応援、ホントありがとうございました。

しかし、ホント、生きていてよかったです。w
Posted by hide at 2015年12月27日 08:37
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