日本一高い場所3776mをめざして、ひたすら歩いた。
雨がやんで見えた、満点の星空に時を忘れた。
振り向いたら、三日月が肩越しに見えた。
雲海から昇る太陽に、神を見た。
頂上から見た空の青に、胸がしめつけられた。
雨の中、どこまでも広がる砂礫ばかりの
富士の大地に途方に暮れた。
自然と自分、なんだかよくわからなくなる
富士山の空間。
kantokuさんと富士山に登った。
金曜日の深夜、丑三つ時、富士山御殿場口に集合。
辺りは鬱蒼としていて、真っ暗な上に雨。気味が悪い。
kantokuさんは、すでに着いていて仮眠中。
雨が強かったので、出発を一時間遅らせて私も仮眠。
気が付くと雨は霧雨。
当然のように、我々は登山決行を決め歩き出す。
深夜2時過ぎ。標高1440m。微かな雨音。
kantokuさんは、2週間前にも、ここ御殿場口から富士山頂を
めざしピークを極めている。すごく心強い。
ヘッドライトの小さな明かりを頼りに登っていくが、
基本的に暗くて、どんな所を歩いているのか、まったくわからない。
2時間位、黙々と登る。やがて雨が止んだ。
風が雲をどこかに運んで、空に星空が広がる。
カシオペア座・北斗七星なんかがくっきりと見える。
満天の星空だ。すごい。すごい。
振り向くと、空が薄明るくなって、雲海が広がっているの見える。
そして三日月。
時間が経つにつれ、オレンジ色の空がどんどん広がっていく。
いつのまにか、星も月も見えなくなって、今にも太陽が昇りそうだ。
疲れてきたので、腰を休めてご来光を見ることにする。
どこまでも広がる雲海を、オレンジ色の光が染めていき、
やがて昇れる太陽。キラリと光る。輝く。
kantokuさんも、私もこの情景に心奪われ、訳もなくうれしくなり
笑顔になり、元気になる。
めったにない朝を満喫。
すっかり明るくなり、上を見ると、富士のピークもその姿を見せた。
かなり遠い。かなり遥か。でも、行かねばならない。
チョコパンを食べて、コーヒーを飲んで、再び歩き出す。
標高2000m、3000mとどんどん高度を上げていく。
呼吸はそんなにつらくないが、足がキツイ。
一歩一歩に、気合を込める。
御殿場ルートは、富士山の他のルートと違い、
山小屋が少ない。7合目の日ノ出館は休業中だし、
わらじ館は、店じまいの準備をしていた。
それでも、砂走館と赤岩八合館は、営業していて
しばしの休憩をそこでとった。
といっても、軒先で休ませてもらうだけで、
500円のペットボトルなどは買わない。
標高3300mの赤岩八合館に辿り付いたのは、午前7時40分。
出発して5時間以上経った。
体力的にかなりきつい。
植物のない赤い岩だらけの荒涼とした景色。
kantokuさんも、私も無口で登る。
雲がすごいスピードでやってきて、あっという間に
真っ白な世界になったり、霧が晴れて、青い空が遠くに
見えたり、目まぐるしく状況が変わる。
そんな中でも、一歩一歩、歩くうちに、頂上は近づく。
うつむきつつ進んでいき、見上げたら、白い鳥居が見えた。
胸がドキンとする。
あれが、おそらくゴール。頂上。
歩くスピードは変わらないが、込みあげてくる想いが
着実に前に進む。
午前8時45分。富士山頂上到着。
達成感というより、もう登らなくていいのだという解放感。安堵感。
丁度、クワーと雲がなくなり、完璧な青空。
kantokuさんと満面の笑顔。
他の登山家の皆さんも、みんないい顔していて
頂上は、かなりアットホームで平穏・和平な雰囲気が漂う。
富士の火口がよく見えた。雄大な景色だ。
浅間神社に、お詣りをした。無事登れたことを感謝。
そして、しばしの休憩。
ガスバーナーを取り出して、インスタントラーメン。
ノンが作ってくれたイチゴパン。
チョコレートや、スナック菓子。
そして、kantokuさんの奥さんの手作りおにぎり。
パリパリの海苔をその場で巻いていただいたのだが、
これが涙の出るほどおいしかった。
日本で一番高い場所で過ごす時間は楽しくて、
気が付くと2時間ほど経過していた。
しっかり元気になったので、いよいよ下ることにする。
午前11時。
天候が変わり、雨がたくさん降ってきたが、
もう帰るだけなので、あまり気にならない。
で、なぜか二人は、走り出す。
ノーマルに歩いている登山家の皆さんに
迷惑のかからぬよう、タッタカタッタカと走る。
やがて有名な大砂走り。
延々と広がる黒い砂漠。黒い砂浜。
雨のせいで、視界が悪く、ちょっと先はグレイの世界。
富士の裾野では、自衛隊の訓練が行われているようで、
時より「ドーン、ドーン」と大砲の音がする。
この世のものとは思えない場所。不気味。
そんな場所を、1時間弱位走ったのか。
kantokuさんが、道を教えてくれるので本当よかった。
でないと、そのまま消えてしまったかもしれない。
そして、ようやく午後1時、スタートした御殿場口の
駐車場に到着。
無事、到着。
大砂走りで、泥だらけになったが、
駐車場に、御殿場観光協会の方々が大きなタンクに
水を用意してくれていたので、そこで洗えた。
気分的にスッキリしつつ、kantokuさんと無事帰れたことを
喜びあう。
やはり富士の自然は過酷と言ってよく、晴れたり曇ったり
雨だったり目まぐるしく環境が変わった。
状況によっては、撤退という判断も必要だっただろう。
そんな中で、こうして二人で「よかったですねえ。」などと
言い合えるのは、奇跡かもしれない。
すごい。
帰ってきた直後は、御殿場ルートは、長くてツラて
もう2度と行きたくないと思っていたが、今は、
なんとく、また行きたくなっている。
次回が、いつかわからないけど、富士山の頂上に
立って、景色を眺める日は、再び来るはずだ。
富士山登山2011、なかなかどうして感動の連続。
すごくよかった。
にしても、kantokuさんは、超人だと思う。
その前日、朝ラン7キロ、一日仕事して、夕方水戸から
御殿場まで車で移動、2時間の仮眠の後、夜中から
翌昼まで富士山登山、そしてそのまま水戸まで
一気に帰る。ご自宅に着かれたのは、午後8時とのこと。
さらに眠いはずなのに、当日の写真をアップしてくれた。
(kantokuさんも私も、写真好きでバシャバシャ写真を撮った)
すごいパワフル。タフネス。やさしい。
kantokuさん、本当、お付き合いいただき、有難うございました。
おにぎりも、本当おいしかったっす。
⇒kantokuさんのブログ【走れ現場監督「汗をかけ!!」】
*長文になってしまい、失礼いたしました。